私的シックス考〜ハッカーズ・プレイ日記


Last. Novel シックス=やっぱり、愛すべきヤツ(モノリス以降)


無力感。

いつも、そいつを痛感してた……
たぶん、アイツは、きっと。


姉を目の前で失った時も。
ユーイチが飛び出した時も。
俺(主人公)達が、それを助けに殺し屋の元へ向かった時も。
そして、モノリス―――
リーダーを、救えなかった時も。


本当は、強くありたかったんだと思う。
俺達スプーキーズの仲間や、身の回りの大切な人を、守るために。
それができないから、精一杯もがいてた……
ことさらに、いきがってみせたり。アジトを守るために、無茶したり。

お前の人懐っこさに、俺はずいぶん救われたけれど。
「淋しさ」を隠そうとしてたのは、わかってた。
「弱さ」を隠そうとして、笑ってたことも。
知ってたか?
ヒトの「笑い」って、動物の「威嚇」の表情が変化したものなんだってな。
「自分に触れるな」という意味の、威嚇の表情。

弱い自分が、もどかしくて……無力な自分が、許せなくて。
だから。いつも、悔しくて。
悔しすぎるから、それをうまく表現するすべがなくて。
『殺すしかなかったのかよ!』
その言葉を、俺が黙って受け止めたのは。
―――お前の無力感が、痛いほどわかったから……。

お前が責める筋じゃないだろう、とは、不思議にも思わなかった。
それだけ、お前は俺の「強さ」を信頼してくれていた。
そんな、大層なものじゃないのにな。
そして……そう思っちまうほどに、俺はお前より少しばかり恵まれてたって事実に、やっと気付いたから。
―――お前のいつも感じていた「無力感」を、身に沁みて感じながら。


責めるつもりはない、と謝りながら、お前は泣いていた。
現実世界で、お前の涙を見たのは初めてだったことに、気づいた。

不器用なお前が、初めて素直に泣いていた。
いつも人懐っこくて、感情を素直に表わすくせに……妙なところで、意地を張ってたお前が。
「悲しみ」や「不安」―――人間のいちばん無防備な表情であるそれらの感情だけは、無意識に隠そうとして。
何でもない振りを装ったり、わざとらしくとぼけてみたり……
それでも追いつかなければ、攻撃的な「怒り」という形でしか、豊かすぎる感情を表現できなかったお前が。
最後にはただ、泣くしか……できなかった。

泣きたい時は、思いきり泣いたほうがいい。
悔しくて、無念で、どうにもならない感情を出し尽くしちまえば、傷が癒えるのも早いから……
それが…… 深すぎて、癒せそうもない傷―――だからこそ。
たぶんそれは、ひとが自分の心を守るための、本能で。

傷つきやすい心を、そうやって守ってきたから。
だからお前は、誰よりも早く立ち直って来れたんじゃないか。
そして、これからも、たぶん……。


俺は、信じている。
それが、お前の持つ「強さ」なんだと。

(完)



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